ワードフライデイ

森山大道佐内正史トークセッションに行く。


二人のトークは抑揚がアマリなく、率直に言って聞くという立場にいる私は、しばしばその空間にいずらくなった。しかし、不思議なことに、このような疎外感を感じながらも、彼らにすごく共感がもててしまった。なぜなら、
彼らは、彼らの世界に集中してくれていたこと。そこにやさしさを感じたから。だと思う。


そんな会話の中の、森山大道さんの
「過去はいつも新しく、未来はいつも懐かしい」という言葉。
この言葉が気になった。


写真家は何を伝えたいのだろうか。伝えたいことはあるのだろうか。
そこの空間。そこの感じ。そこの匂い。そこの色彩。そこの気温。
そこの、そこにある、それ。


彼らの写真に写ったそれは、だから何?では済まされない魅力的な力を持っている。我々に伝わる何か。分からないけど、伝った気になってしまう。
こちらが、うっとりするようなずっきりするよなしゃきっとするような。


それが伝わったときに、飲みかけの冷めた珈琲が突然温かくなったり、バタアクッキーにシナモンがついたり、窓の外で曇っていた天気に晴れ間が見えたり、と、そんな奇跡はおこらない。
だけど、奇跡が起こりそうに思えてしまうんだよね。


奇跡が与えた未来。温かい珈琲、シナモン、晴れ。
奇跡が与えた過去。冷たい珈琲、バター、曇り。
考えると未来は昔のおいしい記憶で、過去は変化を遂げたおいしくない新しい記憶。


それらは彼が伝えたいものとはまったく違うものかもしれないけれど・・・


私が伝えられたもの
私が伝えるもの、伝えたいこと。誰かに伝えられるもの。
これからも、ゆっくり考えていきたい。
人前で手を上げる勇気のない弱気な私は、出来る限り涙をこらえて、そう心に誓ったのです。